大阪の建築家 石丸信明

広さは目安に過ぎず

住宅の設計の打ち合わせを行っていると「子ども部屋の広さは6畳ではなく、8畳にして下さい」とか、「子ども部屋の色を青色にして下さい。その方が、よ く勉強できると聞いたので」などと、クライアントから言われることがある。設計者としては、頭を抱え込んでしまう。単純に広ければ、あるいは青ければ、子 供がよく勉強できるのだろうか。家族の思い入れは分かるのだが、どこかに疑問を感じてしまう。しかし、かと言って反論する論理もみつからないのである。

子ども部屋には、勉強机、本箱、ベッド、クローゼットなどが必要である。その広さをどのように考えればよいのだろうか。一般的には、ベッドと机と本箱を置くのに必要な広さは4畳もあれば十分である。

F邸は、夫婦と男の子4人の家族である。お子さんは、高校生1人、中学生2人、小学生1人。子ども部屋は、上のお子さん2人が個室であり、下の子2人は相 部屋である。個室の広さは、4・6畳であり、相部屋は9・2畳である。広さからいえば、決して広いとは言えないだろう。

この住宅の打ち 合わせは、春からはじまり、夏、秋、冬、次の夏となって、やっと方針が決まった。Fさん夫妻が購入した敷地は、新しく開発された住宅地内にあったが、南側 に地山があり、その緑の風景が気に入ったという。一年以上続いた打ち合わせは、今から振り返ってみると、いかにその風景を各室に取り込むかが大きなテーマ だった。南側の山の風景を眺めるという行為を通じて、家を秩序づけ、家族にまとまりを与えられないか、と考えた。子供部屋も、天井の高さを最大3・6なるのか、あるいはご主人の書斎となるのか。家は、何十年もの間、生活を受け入れる器である。状況に応じ器はルーズに使いたいものだ。
1999年8月12日(木曜日)  毎日新聞掲載