大阪の建築家 石丸信明

デ・ルッキとピアノ

イタリアの建築家のミケール・デ・ルッキとレンゾー・ピアノのことである。愛称を込めて、デ・ルッキとピアノと呼ばさせて頂きたい。
デ・ルッキはエットレ・ソットサスが率いたメンフィスというグループで80年代名を上げた。建築家としてだけでなく、プロダクト特に照明機具のデザインで有名である。アルテミデ社のTOLOMEOはヒット商品としてよく目にする商品である。先日、彼の照明器具のデザインに関して、講演を聞く機会があった。ローマとミラノには大勢のスタッフを抱える事務所があるのだが、彼の創作の原点は、小さな村である。そこでは、デザインのインスピレーションを沸かすために、スケッチやオブジェの制作をきわめてアート的に考え、アトリエとしての生活を行っている。そこで、アイデアが浮かぶと、引退した職人たちにより、プロトタイプを制作させる。それを、ミラノやローマの事務所に持っていき、より現実の商品に実現をさせる検討に入っているようである。その話しを聞いて、レンゾー・ピアノのジェノバの事務所を思い出した。
コートダジュールの東の端に位置し、地中海に面する南斜面に寄り添うように事務所がある。その中に模型制作室があるのだが、引退した大工が木製の模型を制作する。道具は、職人の本物が並ぶ。彼の設計した建物からは、建築の最先端の技術を駆使する印象がある。最先端の事務所ならば、事務所もコンピューター等最新の道具だけで設計しているのかと思っていたが、もう一つの軸に職人に対する敬意がある。
かれらの職人の仕事をデザインの中に組み込むことに、イタリアデザインのオリジナリティーを感じる。
特に彼らの作品で、日本と大きく違う点は金物である。ヨーロッパでは、鋳物が厳然残っており、自在にデザインした造形を組み込んでいる。日本では、金物において職人が仕事をする範囲は、非常に狭く工場でのラインに乗った作業がメインである。どうしても、ちょっとした小技を聞かせることが難しく、システム的な造形になってしまう。金物に職人の手仕事の気配を感じることはほぼ出来ない。
パーティの場で、デ・ルッキのデザインした腕時計を見せると、奥さんとこんなのもあったなあと喜んでくれた。自分のデザインしたプロダクトは、彼らにとって子供のようなものでもあるのだろう。