大阪の建築家 石丸信明

芦屋川の景観

今回は、モノといっても少し大きく景観に着目してみたい。芦屋川は、六甲山より流れる川のひとつである。山から平地の部分が短く、いきなり海に流れ込む。天井川であり、長年の土砂の堆積により川の底面が平野部より高い位置にある。芦屋川の場合は、JRの線路が川の下を潜っている。
上流には、フランク・ロイド・ライトが設計したヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)がちょうどこの川筋を見下ろすように建っている。おそらく、ライトはこの景色を堪能し、それを楽しむための家を考えたに違いない。
川自体は、道路面から2段下がった形になっている。水面の両側に、道路面から1段下がり遊歩道が整備されている。道路側の歩道に松並木が続いている。松は長い風雪に耐え、風の向きに傾いている。川の流れは、いつも水量が在るのではなく、雨が降ったあとは流れあるのだが、晴れた日が続くと干上がってしまう。
この遊歩道が気持ちいい。私は、朝早く起きたときによくこの芦屋川を河口に向かって散歩する。遊歩道が一般の車道から降りた所にあり、水面や、草、松並木、空といろいろ感じながら河口に向かう。河口では、対岸に人工島や、高速道路が海の上を渡り都会的な光景を作り出しているが、やはり海である。潮の満ち引きにより水面の位置が毎回変わり、自然を感じさせる場である。
私のように芦屋川の散策を愛する人が多く、犬の散歩やジョッキングをしている人々と軽い挨拶をする。少し驚いたのは、妙令の男性が、自主的にごみを拾っていることだ。ビニール袋を用意し、だれにもいわれず淡々とごみを拾っている。
アフォーダンスという言葉がある。アフォードという・・・する。・・・することができる。・・・余裕がある。という動詞から展じ、空間やモノが人に何かを、与するということをいう。素晴しい景観は、ヒトに何らかの働きかけを行い、ヒトは景観に愛情を感じ、ある意識下での行動を規定する。非常に繊細ながら確かな関係を構築する。近隣の人々はその風景を愛し美化を心がける事が暗黙の了解である。しかし車でバーベキュー等やってくる一部の外部の人には、それがわからないようだ。騒いだ後ごみも片付けず、放置したまま帰っていく。景観からのアフォーダンスを、分かる人には分かるのだが、分からないひとには分からない。不思議な関係だ。