【第128回木三会】スチールカーテンウォールの技術をより多くの人に伝えるために【ヤマキ工業株式会社】
― ヤマキ工業の名古屋営業所長・山田さんとの対話から考えたこと ―
今の社会には、「専門知」と「共有知」という2つの知識の捉え方があります。
「専門知」とは、特定の分野に関わる人だけが理解できる専門的な知識。
一方で「共有知」は、より広く、一般の人たちにも伝わり、共有される知識です。
今回お話を伺ったヤマキ工業さんは、もともと関西国際空港の屋根工事で高い評価を受けた実績ある会社です。
現在は、スチール製カーテンウォールの専門メーカーとして、全国から声がかかる存在です。
※カーテンウォールとは、建物の外側を覆うガラスやパネルでできた“外壁”のこと。
柱や梁などの骨組みに取り付けられる構造で、建物の重さを支えず、まるで“カーテンのように吊り下がっている”のが特徴です。
久しぶりに山田さんのお話をじっくり伺い、私自身は専門家としてヤマキ工業さんの技術の価値をよく理解できたつもりです。
しかし一方で、たとえば社内の若い社員さんや一般の方々には、ヤマキ工業さんが「どんな仕事をしていて」「どんな建物に使われているのか」というイメージが、まだ十分に伝わっていないようにも感じました。
これは建築の世界全体にも共通する課題かもしれません。
以前、あるビルオーナーに改修工事の見積書を提出した際、「建具工事」という表現について「建具とは何ですか?」と尋ねられたことがありました。
私たちには当たり前の言葉でも、一般の方には意味が伝わらないことがあります。
「建具」ではなく「ドア」と言えば、もっと理解しやすかったのかもしれません。
同じように、ヤマキ工業さんのような技術力の高い会社でも、社内外の“非専門家”に対して、どれだけ自分たちの技術の魅力や価値をわかりやすく伝えられているかが、これからの大きな課題なのではないでしょうか。
先日、シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)の井村雅代コーチとお話しする機会がありました。
北京オリンピックの決勝で、各国が入場したときの観客の反応で1位・2位・3位が予測できた、という話が印象的でした。
「私は専門家ではありません」と前置きした私に、井村コーチは「観客の視点こそが重要」とおっしゃっていました。
シンクロは審査員だけでなく、審査員の向こう側にいる観客や世界中の視聴者に訴えかけることができるかどうかで価値が決まるということです。
つまり、専門的な技術であっても、それが見る人に訴えかける力を持っているかどうかが問われているのです。
かつての20世紀型の技術会社は、“専門知”を磨くことで発展してきました。
しかし今は、専門知を“共有知”に翻訳できる企業こそが、より多くの人に価値を届けられる時代です。
ヤマキ工業さんのように、全国的にもオリジナリティのある技術を持つ会社こそ、その魅力を“誰にでも伝わる形”で発信していくことがますます大切になると感じます。
できれば、こうしたテーマについても、木三会や他の場で山田さんとご一緒に議論できればと思います。
その対話から、皆さんにとってプラスになる新たな気づきや共有知が生まれることを願っています。
石丸信明/ARX KOBE
■第128回木三会 ゲスト企業さま
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ヤマキ工業株式会社
〒〒382-0901 長野県須坂市小河原3954-20
TEL:026-248-1121
URL:https://www.yamakikogyo.co.jp
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木三会は、以下の3点に重点を置いて、議論していきます。
- 業界の枠を超える
- 一般の人に向けてわかりやすいように説明する
- 未来に向けてどのように価値をつくっていくか
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